ANZグループは19日、世界でも珍しい携帯電話銀行口座サービス「ウィング」を今日20日にカンボジアで立ち上げると発表した。銀行へ足を運ばずに携帯電話上に仮想銀行口座を開くことができ、携帯電話による送金が可能になる。
携帯電話銀行口座の歴史はまだ新しく、2005年にフィリピンで、2007年にアフリカで始まったばかり。インドシナ半島では今回のカンボジアが初となる。
ウィングを利用したい携帯電話利用者は、まずウィングの代理店へ行き、自分の携帯電話銀行口座に入金する必要がある。主に携帯電話販売店がウィングの代理店となっており、現在プノンペンに60ヶ所、コンポン=スプー・ター=カエウ・カンダール州に合わせて10ヶ所がある。
一度ウィング代理店へ行った後は、利用者はウィングのサービス番号に電話して、携帯電話にコード(コマンド)を入力することにより、入出金を行うことができる。販売店はそれに応じて現金を渡したり受け取ったりして、取引手数料を利益として得るしくみだ。
非ウィング利用者への送金には1ドルの手数料がかかり、ウィング利用者への送金には送金額の最高1パーセントの手数料がかかる。また、出金には出金額の最高4パーセントの手数料がかかる。取引額の下限はなく、上限は1日1,000ドルに設定されている。
現在カンボジアでは、プノンペンから地方への送金には、タクシー運転手に2ドル程度の手数料で依頼する方法が広く行われている。ウィングを利用すれば、手数料が0.50ドルを超えることはまれなため、安く送金が可能になる、とウィング最高責任者のブラッド=ジョーンズは月曜に述べた。
現在、カンボジアの銀行口座保有者数は約50万人、マイクロファイナンス口座保有者は30万人であり、差し引き830万人のカンボジア人がまだ銀行口座を持っていないが、手数料が安くデポジットも不要な携帯電話銀行は、通常の銀行口座を開くことのできない低所得層に強く訴求するだろう、とジョーンズは述べた。
ウィングは当面、テレコム マレーシア インターナショナルの015か016で始まる電話番号でしか利用できないが、ジョーンズによれば、3〜6ヶ月のうちにすべての携帯電話会社で利用できるようにする予定だという。競合関係にある携帯電話会社間の接続は問題にならない、とジョーンズ。なぜなら、携帯電話銀行の取引はすべていったんウィングの中央システムへ行き、その後各携帯電話会社へ転送されるからだという。
ケニヤで始まった同様の携帯電話銀行は2年間で400万人の登録者を得ており、カンボジアでもこの年末までに数万人の利用者を見込んでいる、とジョーンズは語った。
ジョーンズによれば、ウィングはすでに、プノンペンのある縫製工場の従業員50人を対象に2ヶ月の試験運用を行なった。「利便性が非常に気に入ってもらえた。時間の節約になり、銀行で待たされる必要もないからだ」とジョーンズ。縫製工場従業員は、地方への送金需要を持ちながら銀行口座を持たない層として、ウィングのターゲット層に想定されている。
ジョーンズによれば、ANZロイヤル銀行の株式の55パーセントを保有するANZグループは、今回ウィングの立ち上げに500万ドルを投じた。ANZグループのプノンペン事務所は432番通りにある。
シエムリアプ州とプレア=ヴィヒア州の間で毎日約75ドル、ときには1,000ドルの送金を請け負っているタクシー運転手のチャン=ソムナーンは、ウィングによってこの商売が脅かされることを恐れている。同氏は現在、送金請負で日に約5,000リエルを得ているが、それが得られなくなってしまうかもしれないと語った。
2009年01月20日
カンボジアウォッチ編集部
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